症状固定とは — 治療費支払いが終わる法的な区切り

ご自身の過失が少ない交通事故では、通常、相手方保険会社が治療費を病院へ直接支払ってくれます(一括対応)。そのため窓口負担なく治療に専念できますが、この支払いが永遠に続くわけではありません。

交通事故の賠償実務には「症状固定」という考え方があります。正確には「医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」とされています。簡単に言えば、「これ以上治療を続けても、大きくは良くも悪くもならない状態」のことです。

症状固定に達すると、それ以降の治療費は原則として賠償の対象外となります。そのため保険会社は、症状固定を理由に治療費の支払いを打ち切ってくるのです。

症状固定「前」症状固定「後」
治療費賠償の対象原則、対象外
休業損害賠償の対象原則、対象外
残った症状後遺障害の等級認定を申請し、認定されれば後遺障害慰謝料・逸失利益を請求

ポイント

症状固定は「治療の終わり」であると同時に、「後遺障害の賠償のはじまり」でもあります。完治しなかった症状は、後遺障害の等級認定を通じて賠償を求めていくことになります。

保険会社の治療費支払いは「立替払い」です

意外に知られていませんが、相手方保険会社による治療費の直接支払い(一括対応)は、法律上の義務ではなく、保険会社によるサービスと位置付けられています。本来は、被害者がいったん治療費を支払い、後から相手方に請求するのが原則的な流れです。

「サービスだから」といって、保険会社の言うタイミングが医学的に正しいとは限りません。しかし、任意のサービスである以上、打ち切り自体を強制的に止める手段は乏しく、一度打ち切られた後にこれを覆すことは通常困難です。だからこそ、打ち切りを告げられた段階での初動が重要になります。

打ち切りを告げられたときの対処法4つ

1. その場で同意せず、主治医に相談する

症状固定かどうかの判断で最も重視されるのは、保険会社の担当者ではなく医師の医学的な判断です。まだ治療効果が出ているのであれば、主治医に症状と治療の必要性を伝え、診断書等に反映してもらうことが出発点になります。

2. 治療継続の必要性を示して延長を交渉する

診断書や治療経過をもとに、治療を続けることで症状の改善が見込めることを具体的に説明できれば、支払期間が延長される場合もあります。弁護士が診断書等を読み込んで説得的に主張することで、延長につながったケースもあります(後記の事例参照)。

3. 打ち切り後も、必要な通院を自己判断でやめない

支払いが打ち切られても、症状が残っているのに通院を中断してしまうと、「その程度の症状だった」と評価され、後遺障害の認定にも不利に働きかねません。健康保険等を利用して通院を継続し、後から治療費を請求する余地を残す方法もあります。進め方は事案によりますので、弁護士にご確認ください。

4. 後遺障害の申請を検討する

症状固定とされた後に症状が残っている場合は、後遺障害の等級認定の申請を検討します。ただし、申請には相応の期間がかかり最終的な示談も遅れるため、認定の見込みを踏まえて方針を決めることが大切です。

症状固定後の流れ — 後遺障害の申請へ

症状固定後は、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責の等級認定を申請します。認定されれば、等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できる可能性があります(金額の目安は後遺障害慰謝料と逸失利益の相場をご覧ください)。

むちうち等で多い14級9号の認定では、通院の継続性や症状の一貫性が重要とされています。詳しくはむちうちで後遺障害14級9号・12級13号が認定されるポイントで解説しています。

解決事例 — 打ち切り時期の延長に成功したケース

当事務所の解決事例

相手方保険会社から「事故から3か月で治療費を打ち切る」と告げられていた被害者の方が、弁護士費用特約を利用して当事務所にご依頼くださいました。当事務所では診断書等を読み込み、治療の継続により症状の改善が見込めることを具体的に説明した結果、事故から6か月目まで治療費の支払いが継続されました。

※事案の内容によって結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

このように、打ち切られる「前」にご相談いただくことで、選択肢が広がる場合があります。

ご注意: この記事は一般的な解説です。症状固定の時期や治療継続の当否は、症状・治療経過など個別の事情によって異なります。具体的なご事情については、主治医および弁護士にご相談ください。

治療打ち切り・症状固定についてよくある質問

Q. 症状固定の時期は保険会社が決めるのですか

いいえ。症状固定はあくまで医学的な判断を基礎とするもので、保険会社の担当者が決めるものではありません。まだ治療効果があると感じるのであれば、まず主治医にご相談ください。

Q. 打ち切り後に自費で通院した分は請求できますか

症状固定前の治療として必要かつ相当と認められれば、後から請求できる場合があります。ただし争いになりやすい部分ですので、通院を続けるかどうかの判断も含め、早めに弁護士にご相談ください。

Q. 「あと2週間で打ち切ります」と言われました。今から相談しても間に合いますか

時間の余裕が少ないほど選択肢は狭まりますが、打ち切り前であれば延長交渉の余地が残っている場合もあります。すぐにご相談ください。

まとめ — 打ち切りと言われる前のご相談が有効です

治療費の打ち切りは、一度実行されると覆すことが難しい一方、打ち切り「前」であれば、延長交渉や通院継続の工夫など打てる手が残されています。弁護士に依頼すれば保険会社とのやり取りの窓口も弁護士に一本化され、治療に専念していただけます。「そろそろ打ち切り」という話が出た段階で、早めにご相談ください。