後遺障害等級とは — なぜ賠償額を左右するのか

治療を続けても完治せず症状が残った場合(症状固定)、その症状が自賠責保険の定める「後遺障害等級」に該当するかどうかの認定を受けることになります。等級は最も重い1級から最も軽い14級まであり、認定された等級に応じて、次の2つの賠償の金額が大きく変わります。

等級で変わる項目内容
後遺障害慰謝料弁護士基準の目安で、14級110万円〜1級2,800万円と等級によって大きく異なる
逸失利益等級ごとに目安の定められた「労働能力喪失率」(例: 14級5%、12級14%)をもとに計算される

金額の詳細と計算方法は後遺障害慰謝料と逸失利益の相場で解説しています。

ポイント

後遺障害の賠償は「症状の重さ」を直接評価するのではなく、「認定された等級」を基礎に計算されます。実態に見合った等級の認定を受けることが、適正な賠償への出発点です。

別表第1と別表第2 — 2つの表の違い

後遺障害等級は、大きく「別表第1」と「別表第2」に分かれています。

区分対象等級
別表第1介護を要する後遺障害。神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(1級1号)、随時介護を要するもの(2級1号)など1級・2級
別表第2それ以外の後遺障害全般(目・耳・口・上肢・下肢・神経症状・醜状など部位と程度で細かく規定)1級〜14級

脳の器質的損傷を伴う高次脳機能障害で介護が必要な場合などは、別表第1に該当する可能性があります(詳しくは高次脳機能障害と診断されたら — 等級認定と賠償のポイント)。

等級ごとの障害の程度(代表例つき早見表)

別表第2の各等級には、部位と程度に応じた認定基準が号数で細かく定められています。全体のイメージをつかんでいただくため、各等級の代表例を一覧にしました。

等級障害の程度の代表例(別表第2より抜粋)
1級両眼の失明、両上肢をひじ関節以上で失ったもの など
2級両眼の視力が0.02以下になったもの、両下肢を足関節以上で失ったもの など
3級咀嚼または言語の機能を廃したもの、神経系統の機能等に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの など
4級両耳の聴力を全く失ったもの、一下肢をひざ関節以上で失ったもの など
5級一上肢の用を全廃したもの、一下肢を足関節以上で失ったもの など
6級脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの など
7級神経系統の機能等に障害を残し軽易な労務以外に服することができないもの、外貌に著しい醜状を残すもの など
8級脊柱に運動障害を残すもの、一下肢を5cm以上短縮したもの など
9級一眼の視力が0.06以下になったもの、外貌に相当程度の醜状を残すもの など
10級一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの、14歯以上に歯科補綴を加えたもの など
11級脊柱に変形を残すもの、両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの など
12級局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)、一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの、外貌に醜状を残すもの など
13級一眼の視力が0.6以下になったもの、一下肢を1cm以上短縮したもの など
14級局部に神経症状を残すもの(14級9号)、上肢・下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの など

※各等級の全ての号を網羅したものではありません。ご自身の症状がどの等級に当たりうるかは、個別の検討が必要です。

最も認定が多いのは「14級9号」です

後遺障害の中で最も認定件数が多いのは、別表第2の14級9号「局部に神経症状を残すもの」です。むちうち(頸椎捻挫)や腰椎捻挫で痛み・しびれが残った場合が典型例です。

もっとも、どのような場合に「局部に神経症状を残す」といえるのかは、条文上明確に規定されていません。実務上は、通院の継続性、症状の一貫性、検査結果などの事情を総合して判断されており、症状が残っていても認定に至らないケースもあります。認定のポイントはむちうちで後遺障害14級9号・12級13号が認定されるポイントで詳しく解説しています。

等級認定の流れと申請方法

等級認定は、症状固定後に主治医が作成する「後遺障害診断書」などの資料をもとに、自賠責の調査機関(損害保険料率算出機構)が審査します。申請には、相手方の任意保険会社を通じて行う「事前認定」と、被害者自身が自賠責保険へ直接申請する「被害者請求」の2つの方法があります。

提出資料をコントロールできる被害者請求には、必要な検査結果や意見書を漏れなく添付できるというメリットがあります。どちらの方法が適しているかは事案によりますので、申請前に弁護士へご相談ください。

ご注意: この記事は制度の一般的な解説です。等級認定の結果は症状・検査所見・治療経過など個別の事情によって異なり、特定の等級の認定を保証するものではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。

後遺障害の等級についてよくある質問

Q. 痛みが残っていますが、必ず等級が認定されますか

必ず認定されるとは限りません。自覚症状だけでなく、通院状況や検査所見などの裏付けが重視されます。認定の見込みを高めるためにも、症状固定の前段階からの準備が大切です。

Q. 認定結果に納得できない場合はどうすればよいですか

異議申立てという手続があり、非該当から認定に変わったり、等級が上がったりする場合もあります。認定理由を分析したうえで、不足していた医証を補って申し立てることが重要です。

Q. 自分が何級に該当しそうか、事前に分かりますか

症状・治療経過・検査所見を伺えば、取り扱い経験を踏まえて、該当しうる等級の見通しをご説明できます。当事務所の無料相談をご利用ください。

まとめ — 何級に該当しうるか、まずご相談ください

後遺障害の等級は、賠償額を左右する最も重要な要素です。等級の仕組みを知り、実態に見合った認定を受けるための準備をすることが、適正な賠償への第一歩になります。「自分の症状は何級に当たりうるのか」「このまま申請してよいのか」と迷ったら、示談の前に、後遺障害に詳しい弁護士へご相談ください。