後遺障害の等級は誰が審査するのか

後遺障害の等級認定は、各任意保険会社が判断するのではなく、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が調査・判断します。保険会社ごとの判断のばらつきを避けるため、審査は一元化されています。

審査は原則として提出書面(後遺障害診断書・診療報酬明細書・画像など)に基づく書面審査で行われます。等級の仕組みそのものについては、後遺障害の等級についての基礎知識をご覧ください。

申請方法は2つ — 事前認定と被害者請求

等級認定の申請には、次の2つの方法があります。

事前認定被害者請求
申請者相手方の任意保険会社被害者本人(弁護士が代理可能)
被害者が用意する書類後遺障害診断書1通のみ診断書・診療報酬明細書・画像など一式を自ら収集
メリット手間が少なく、結果も比較的早い提出書類を自分でコントロールでき、手続が透明
注意点どのような資料が提出されたか把握できない事務手続が煩雑で時間がかかる

事前認定は手間がかからない反面、認定を左右する資料の選択を相手方側に委ねることになります。認定の見込みに不安がある事案や、追加の検査結果・意見書を添付したい事案では、提出資料をコントロールできる被害者請求が適していることが少なくありません。

ポイント

どちらの方法が適しているかは、症状・画像所見・治療経過によって異なります。申請方法の選択自体が戦略ですので、申請前の段階でご相談いただくのが理想です。

認定結果に不服がある場合の3つの手続

① 異議申立て

非該当や予想より低い等級だった場合、自賠責に対して異議申立てができます。回数に制限はありませんが、同じ資料のまま申し立てても結論は変わりにくく、新たな医証(検査結果・医師の意見書など)を補うことが事実上必須です。

② 紛争処理機構への申請

自賠責保険・共済紛争処理機構に対する紛争処理の申請も可能です。ただし、申請は1回限りのため、タイミングと内容を慎重に検討する必要があります。

③ 訴訟

裁判所は自賠責の認定結果に拘束されないため、訴訟で異なる等級を前提とした賠償を求めることも可能です。もっとも、医学的知見に基づいた十分な主張・立証が求められる、難易度の高い手続です。

弁護士に依頼するメリット — 書面審査を制するために

書面審査では、口頭で痛みを訴えることができません。すべての主張を書面で展開する必要があり、これは書面作成を専門とする弁護士が最も力を発揮できる場面です。

特に、むちうちのように客観的所見に欠けやすい症状では、診療録(カルテ)まで取り寄せて症状の一貫性を整理し、弁護士作成の意見書を添付することで、認定の可能性を高める工夫ができます。

当事務所の経験上、非該当になってから異議申立てで覆すよりも、初回申請の段階から資料を整えて臨む方が効果的です。弁護士費用特約に加入されていれば、これらの対応を自己負担なく(上限の範囲内で)依頼できるのが通常です。

ご注意: この記事は一般的な解説です。弁護士が関与しても特定の等級の認定を保証するものではありません。認定の見通しは症状・画像所見・治療経過など個別の事情によって異なりますので、弁護士にご相談ください。

後遺障害の申請についてよくある質問

Q. すでに事前認定で非該当になっています。もう手遅れですか

手遅れではありません。認定票の理由を分析し、不足していた医証を補って異議申立てをする道があります。非該当の理由によって見通しは異なりますので、認定結果の書面をお持ちのうえご相談ください。

Q. 後遺障害診断書は主治医に任せておけばよいですか

後遺障害診断書は認定審査の最重要書類ですが、医師は治療の専門家であって、自賠責の認定基準に精通しているとは限りません。記載してもらうべき検査や表現について、作成前に弁護士へ相談されることをおすすめします。

Q. 申請から結果まではどのくらいかかりますか

事案によりますが、一般に1〜3か月程度かかることが多く、高次脳機能障害など専門部会の審査を要する事案ではさらに長くなる傾向があります。示談全体のスケジュールと合わせてご説明します。

まとめ — 初回申請の前にご相談ください

後遺障害の等級は賠償額を大きく左右し、その認定は提出書面の質で決まります。申請方法の選択、後遺障害診断書の内容、追加すべき医証 — いずれも初回申請の前に手を打てることばかりです。「症状固定と言われた」「後遺障害診断書を書いてもらう」という段階になったら、申請の前に一度ご相談ください。