評価損(格落ち)とは — 2つの種類があります
評価損(格落ち)とは、修理をしてもなお残ってしまう、車の価値の低下分の損害です。大きく次の2つに分類されます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 技術上の評価損 | 修理をしても完全には元に戻らず、機能や外観に欠陥が残る場合の価値低下。走行性能は回復しても美観が損なわれたようなケースで、美観が重視される乗用車では認められることがある一方、貨物用トラック等では認められにくい傾向 |
| 取引上の評価損 | 修理で元どおりになっても、事故歴・修理歴が残ることで中古車市場での価格が下がることによる損害。「隠れた欠陥があるかもしれない」といった心理的要因による減価 |
実際に争いになることが多いのは「取引上の評価損」です。もっとも、実際にいくら価値が下がったかは売却してみないと分からない、いわば目に見えない損害であるため、保険会社に認めさせるのは容易ではありません。
認められやすいかどうかの3つの判断基準
評価損の有無は、次のような事情を総合考慮して判断されています。
| 基準 | 内容・目安 |
|---|---|
| ① 車種 | 高級乗用車・外国車・国産の人気車種であるかどうかが重視される |
| ② 初度登録からの期間・ 走行距離 | 外国車や国産人気車種は初度登録から5年(走行距離6万km)以内、国産車は3年(走行距離4万km)以内であれば認められやすいとされる |
| ③ 損傷の部位・程度 | フレーム等の車体骨格部分やエンジンなど、走行性能・安全性能に関わる部分に損傷が及ぶ場合に認められやすい。中古車販売で「修復歴」の表示義務がある部分かどうかも一つの基準 |
②の目安を超える年式・走行距離では認められにくくなる一方、新車登録から4か月程度のタクシーで認められた事例(仙台地判令和元年11月26日)もあり、あくまで総合判断です。他方、損傷が軽微で部品交換のみで修復できる場合には、認められないことがあります。
金額の算定方法 — 修理費の10〜30%が中心です
裁判実務における算定方法には主に3つの方式がありますが、実際には修理費基準方式が多く採られています。
(1) 修理費基準方式
修理費用の一定割合を評価損とする方法です。多くの裁判例で修理費の10〜30%程度が認められており、高級車では30〜40%に達することもあります。
(2) 時価基準方式
事故当時の車両価格(時価)に一定の割合を乗じる方法です。
(3) 減価方式
事故前の価値と修理後の価格との差額を直接認定する方法です。
ポイント
修理費用が100万円なら、評価損だけで10〜30万円になり得る計算です。また、損害が生じたこと自体は認められるものの金額の立証が極めて困難な場合には、裁判所が相当な損害額を認定できる仕組み(民事訴訟法248条)もあります。条件に当てはまりそうな車なら、請求しないのはもったいない項目といえます。
請求できるのは「車両の所有者」です — ローン・リース車の注意点
評価損の本質は車両の交換価値(売却したときの価値)の低下であるため、請求権は原則として車両の所有者に帰属します。ご自身の車と思っていても、車検証上の所有者が別になっている場合には注意が必要です。
ローン支払中(所有権留保)の車
ローンの支払中で所有権が信販会社等に留保されている場合、代金の完済前は、買主(使用者)による評価損の請求は原則として認められません。ただし、代金を完済した事実が認められれば、買主による請求が認められます。
リース車両
リース契約上の事情(解約精算金の増額等)による価値下落は、客観的な価値低下とはいえないとされることがあります。もっとも、損傷状況や走行距離等を踏まえて修理費の4割の評価損を認めた事例も存在し、ここも個別の検討が必要です。
立証のポイント — 保険会社は簡単には認めません
一般に「評価損は保険会社が認めないもの」と言われるほど、任意の交渉での支払いには消極的です。しかし、当事務所の経験上、訴訟をせずとも交渉で評価損を認めさせた事例は多数あります。
立証資料としては、一般財団法人日本自動車査定協会の「事故減額証明書」が用いられることがあります。裁判実務では、これ単独で決め手になるというよりも、他の証拠と併せた総合考慮の一資料として扱われるのが一般的です。また、売却価格の差額をそのまま評価損として主張しても、客観的な市場価格を反映していない場合にはそのまま認められるわけではなく、修理費の一定割合に引き直して算定されるのが通常です。
結局のところ、初度登録からの期間・走行距離・損傷部位という判断基準に対応する資料(車検証・修理見積書・修理明細・査定書など)を整理し、裁判例の傾向を踏まえて認められるべき金額を具体的に示して交渉することが重要です。
ご注意: この記事は一般的な解説です。評価損が認められるか・いくら認められるかは、車種・年式・走行距離・損傷の部位や程度など個別の事情によって異なり、支払いを保証するものではありません。具体的なご事情については、弁護士にご相談ください。
評価損についてよくある質問
Q. 保険会社に「評価損は支払わない運用です」と言われました
保険会社の社内運用と、法的に認められるべき損害は別の問題です。裁判例では条件に応じて評価損を認めたものが多数あります。運用を理由に断られても、諦める必要はありません。
Q. 新車で納車1か月の車が追突されました。買い替えは要求できますか
原則は修理費+評価損の賠償となり、買い替え費用そのものの請求は難しいのが実情です。もっとも、納車直後の車は評価損が認められやすい典型例ですので、その分をしっかり請求していくことになります。
Q. 何を用意すれば評価損を請求できますか
車検証(初度登録年月・所有者の確認)、走行距離の分かる資料、修理見積書・修理明細(損傷部位の確認用)が基本セットです。日本自動車査定協会の事故減額証明書があれば、有力な資料のひとつになります。
まとめ — 諦める前にご相談を
評価損は「保険会社が認めたがらない損害」の代表格ですが、車種・初度登録からの期間や走行距離・損傷部位という基準に照らして条件がそろえば、修理費の10〜30%程度(高級車では30〜40%に達することも)が認められる余地のある損害です。弁護士費用特約があれば費用の心配なく依頼できますので、「どうせ無理」と諦める前に、一度ご相談ください。



